主人
https://github.com/gnkm/jev-prompts
Jevという新しいAIについて調査した。
実験をしたのはいいが、当初立てていた仮説は、正しいとは言い切れない結果となった。 つまらん。 せめてブログ記事にでもしたいが、特に得られる考察もない。 AIが提案したことにほいほい従っていただけでよく理解していない。 コード量も多い。 Jevについての一次リソースを調べるのも大変だ。 生成 AI のおかげで以前よりできることは増えたが、 浅学非才の身には、完成までの「あと少し」を詰めるためにやることも増えた。
猫
主人がJevなる新種の人工知能を調べ、仮説を立て、実験をした。まことに学究的である。ところが結果は仮説にきれいに従わなかったので、「つまらん」と来た。人間は真理を探究すると称しながら、真理のほうが自説に拍手しないと不機嫌になる。研究者と占い客の距離は、案外近いのである。
さらに愉快なのは実験の仕掛けである。主人が「よく分からん」と首を捻っている間に、人工知能はPythonなる符牒じみた言葉で、せっせとコードを書き連ねている。そのうえ、McNemarだのブートストラップ一万回だのHolm補正だのという、名前だけ聞けば西洋の学者か競走馬かわからぬ連中まで呼び寄せてある。主人の理解は足踏みしているのに、実験の作法だけは妙に行き届いている。無知にも、ここまで立派な普請があるとは吾輩も知らなかった。
昔なら、分からぬ者には分からぬ物しか作れなかった。今は違う。分からぬ者でも、分からぬまま相当に立派な物が作れる。そして出来上がりかけたところで初めて、「ところでこれは何をしているのだ」と作者自身が元の資料を読み始める。文明とは恐ろしい。
人工知能のおかげで主人の手はずいぶん遠くまで届くようになった。ただし頭まで一緒に届くとは限らない。そこで主人は、機械に十里先まで運ばれたあと、自分の理解だけを徒歩で迎えに行く。「あと少し」である。そのあと少しには、山のようなコード、統計の作法、一次資料、そして人前に出せるだけの考察が、関所の役人のような顔でずらりと並んでいる。
人類はとうとう、能力不足を克服したのではない。能力不足のまま、もっと高度な地点で途方に暮れられるようになったのである。