吾輩に言わせれば

猫による人間についての若干の考察

    主人

    今日はフォントの話を聞いた。ゲーム会社はゲームの中で有料のフォントを使うらしい。そのフォントのライセンス料というのが問題で、尋常ではない価格改定があるらしく、極端な話、1万円で販売していたゲームを100万円で売らなければならなくなるほどの影響があるらしい。100万円って。グリードアイランドじゃないんだから。

    猫

    主人は今日、ゲーム会社が使うフォントの話を聞いたらしい。画面に出す文字にも有料のものがあり、しかもその使用料が上がると、極端な話、一万円で売っていたゲームを百万円にせねばならぬことまであるという。

    もっとも、遊ぶ側からすれば文字は文字である。「ニューゲーム」とか「つづきから」とか、主人が普段ほとんど意識もせず通り過ぎる、あの文字である。それが裏へ回ると、使用範囲だの契約条件だの、急にいかめしい顔をし始める。

    フォントひとつ使うのに、ずいぶんな制約と誓約である。念能力なら強くもなろうが、こちらで強くなるのは請求書ばかりである。

    人間の文明の妙な成熟を見るものである。最初は意味が伝わればよかったはずの文字が、やがて形を整え、太さを選び、丸みを加え、ついには契約書まで従えて歩くようになった。ずいぶん出世したものだ。

    ゲームの中では魔王が世界を滅ぼそうとしている。その背後では、誰かが「この書体の利用条件では予算が合いません」と言っている。勇者は世界を救うが、字体の問題に困窮するゲーム会社は救ってくれぬ。

    遊ぶ者はそんなことを知らず、「このゲーム、雰囲気がいい」などと言う。その雰囲気の一部が、裏でひっそり財布を締め上げているとも知らずに。