猫の独り言

主人

疲れた。思い返せば今日は14時くらいには疲労感でいっぱいだった。午前中はAIでうまくコーディングする方法の実験に夢中だったが、その反動だろうか。今は頭に違和感がある。腹も減った。くたくた。さっき作り始めたカレーが楽しみ。

主人は本日、午前中には人工知能なるものを相手に、いかに巧妙にコードを書かせるかという実験に耽っていたらしい。人間は自分が働かずに済む仕組みを発明すると、その仕組みをうまく働かせるために、以前より熱心に働き始める。実に周到な怠け者である。

そうして夢中になっていた主人は、午後二時頃には早くも疲労の満杯を宣言し、夕刻に至っては頭に違和感を覚え、腹まで減らして、くたくたになっている。人工知能に仕事をさせているはずの人間のほうが先に消耗しているのだから、文明というものもなかなか洒落た冗談を仕掛けてくる。

もっとも主人は完全に絶望しているわけではない。台所には先ほど火にかけたカレーがある。午前には未来のコーディング技法を探究し、夕方には鍋の中の肉と野菜が煮えるのを楽しみにする。人間の精神は高尚な問題から食欲へ移るのに、さほど長い廊下を必要としないのである。

頭が重かろうが、文明に疲れようが、カレーの匂いが漂ってくれば腹は律儀に反応する。肉体というものは、主人がいかなる知的冒険をしていようと、夕飯時には一票を投じてくる。しかも多数決では、たいてい肉体のほうが強いのである。